2005年10月アーカイブ

深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 沢木耕太郎深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海
沢木耕太郎
新潮社 1994/05
定価:¥ 460

アマゾンで詳細を見る
ここまで思い到った時、僕を空虚にし不安にさせている喪失感の実態が、初めて見えてきたような気がしました。それは「終わってしまった」ということでした。終わってしまったのです。 新潮文庫P228より
使い古された陳腐な言葉だけど、 やっぱり、旅は人生に似ているみたいなことを 対談かどこかで筆者は書いていました。

旅を人生でたとえると
第5巻は青年期をすぎて壮年期に入ったところ、
僕の年齢と同じくらいなところでした。

好奇心は磨耗してしまい、
疲れと無関心が出て新鮮味が失われる時期。
赤川次郎の天使と悪魔シリーズだったと思うのですが、
「正常な20代を送らなかった人は、正常な30代、40代になれないのよ...」
のような台詞があって、
妙に納得したことがありました。
(納得というより、当たってるので、ほっといてくれって感想)
振り返れば過去があって、
満たしきれてない喪失感。
形は違うけれど、
妙に筆者の旅の気分とシンクロしているところがありました。

書評(10点中) 5点
趣味は「読書」:深夜特急

流しのしたの骨 江國香織 流しのしたの骨
江國香織
新潮社 1999/09
定価:¥ 540

アマゾンで詳細を見る
江國 香織の小説は、生活感を感じない。 何か、斜陽のお母さんみたいな印象を受けました。 ゆったりしているけど、狂気じみている。 登場人物がアーティスト肌というのか、 そんな感じがあります。

別に悪い意味でなく、
読んでいておとぎ話みたいな感じで気負わずに読めるので
たまに、江國 香織を読もうかなと思います。

ペットを飼った瞬間、
作中で死ぬと思いました。
小説では
作中でペットを飼う=死(+お墓)
という、僕はかってな先入観があります。
(物語が始まる前から飼ってるペットはその限りではないけど)

書評(10点中) 3点
読みやすさ +0.5点
趣味は「読書」:流しのしたの骨

こころ 夏目漱石こころ
夏目漱石
新潮社 1952/02
定価:¥ 380

アマゾンで詳細を見る
他に愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。 新潮文庫 P259より
「先生」がなぜニートになったかと言うお話。

近代日本の代表小説。
でも、
10年ぐらい前に読んで、なんかそれほどの好印象を持ちませんでした。

なんで印象悪かったのを忘れて
まぁ、馬鹿で分からなかったんだろうってことで、再読。
初めて読んだ時は、うじうじした印象しかなかった前半部が、
二回目だと、後半部と密接に関係した
緻密に計算された名作やなぁと感心しました。
すげぇ小説やって喜んでました。

読み終わって、
あとがきを読んだら、三好行雄という解説者が、
「こころ」は構想を変更したと書いており
実際作品にもそのようなくだりがある。

緻密に計算されたと思ったのに、
なんや行き当たりばったりかと思って、
喜んでる自分が馬鹿みたいで、
読み終わってからがっかりしました。
そうだ、10年前もこの解説読んで同じようにイメージが変わったんだ。

読後感がまったく異なるので
解説は基本的に褒めちぎってほしい。

書評(10点中) 6点
趣味は「読書」:こころ

理由 宮部みゆき理由
宮部みゆき
新潮社 2004/06/29
定価:¥ 900

アマゾンで詳細を見る
磁石が砂鉄を集めるように、「事件」は多くの人々を吸い寄せる。 新潮文庫 P93より
昔、宮部みゆきの「火車」を読んで、 一番、作家として難しいところで筆を置いているので卑怯だ。 と、宮部みゆきの話題になると、偉そうに公言してました。 恥ずかしい。 (一方、「魔術はささやく」ええわぁっとも言ってたんですが)

でも、「理由」を読んで、
あぁ「火車」はあそこで終わるの
当然だったんだなと納得しました。
どうしても、ミステリーは、
探偵と犯人は個性があって、犯人は個人的な動機があって、
という、イメージがありました。
しかし、「理由」は、
個人的な事象を扱っていない作品で、
各キャラクターには過去を持たせ、
個性を与えながら、
必要以上にキャラクターを引立たてない。

また恥をかくかもしれないけど、
八代祐司は、もうちょっと。。。

書評の点数は名作で6点。
これ以上は、自分の個人的なつぼにはまるかどうかの基準でした。
でも「理由」は、自分のつぼでは決してなかったですが、7点。
飛びぬけてる。
こういう作家が同時期にいると、新作が楽しみでうれしい。

書評(10点中) 7点
趣味は「読書」:理由

深夜特急〈4〉シルクロード 沢木耕太郎深夜特急〈4〉シルクロード
沢木 耕太郎
新潮社 1994/04
定価:¥ 420

アマゾンで詳細を見る
電車で座っていて、ふと顔をあげると 前の人がハードカバーで「ユリシーズ」を読んでいました。 「ユリシーズ」って一番難解な本ってイメージがあるので、 電車の乗り降りなどで区切り区切りになるのに、読めるわけない。 しかも、書名を強調したハードカバーなんて、 正直、ちょっと、おかしかったです。

僕が本を買うときに外で読む用と
家で読む用とを分けて買っています。

学生のころは、わざわざ時間を作って読書をしなかったので、
ポケットに文庫をいつも入れて、
電車の待ち時間などの細切れの拘束時間に読書をしていました。
細切れになるのでミステリーはあまり読まず(赤川次郎以外)、
ある程度流れをつかんでいる歴史物ばかりを読んでいました。

持ち歩いて読むということでは、
「深夜特急」はかなり名著。
電車でゆられながら熱中して読んでいると、
通勤電車というより、
異国で旅行中みたいな感じを味わうときがあります。

最後の対談も、対談の両者とも
他文化を完全に理解できないと承知しつつも
アプローチしてしまうジレンマが、非情に興味深い。

書評(10点中) 4点
趣味は「読書」:深夜特急

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 井上ひさし井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室
井上ひさし
新潮社 2001/12
定価:¥ 540

アマゾンで詳細を見る
わたしもそう題材に困っていません。妻に逃げられたときの、あの悲しさと開放感......あれなんか、まだ書いていませんからね。(爆笑) 新潮文庫 P269より
作品の内容より 書いてる作家自身に興味がいく人がいる。 井上ひさしはその一人。

何書いてても
「五体不満足」・「自閉症だった私へ」などの本と同じ感覚で、
「ドメスティックバイオレンスだった私へ」
って感じでどこか書いてる作者に意識がいってしまいます。

編集者が
「奥さん少し殴られてくれませんか?」
と、妻を殴りながらアイデアを生み出すなんて
小説よりも奇だ。
というか想像が及ばない。

内容は作文教室の講義内容を書き写したもの。
文章の基本や日本語のことなど浅くて広い講義内容。

受講者による「自分が今いちばん悩んでいること」というテーマの
原稿用紙一枚の作文が面白い。
作家ってやはり日本語に対する造詣が深いんだなと再認識。
素人さんの作文の添削はすごく的確で感服しました。

書評(10点中) 3点
読みやすさ +0.5点
趣味は「読書」:井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室