2008年10月アーカイブ

小説の基本情報 1973年のピンボール (講談社文庫)表紙
1973年のピンボール
村上 春樹
講談社
発売日:2004-11
定価:¥ 420
183ページ
アマゾンで詳細を見る

前回の、風の歌を聴けはよく分からなかったが、
1973年のピンボールのテーマは
たぶん、繰り返し。
だと思う。


 異和感......。
 そういった異和感を僕はしばしば感じる。断片が混じりあっていしまった二種類のパズルを同時に組み立てているような気分だ。とにかくそんな折にはウィスキーを飲んで寝る。朝起きると状況はもっとひどくなっている。繰り返しだ。

講談社文庫 P12

「あなたがピンボール・マシンから得るものは殆んど何もない。数値に置き換えられたプライドだけだ。失うものは実にいっぱいある。歴代大統領の銅像が全部建てられるくらいの銅貨と(略)取り返すことのできぬ貴重な時間だ。
 (略)
 しかしピンボール・マシーンはあなたを何処にも連れて行きはしない。リプレイ(再試行)のランプを灯すだけだ。リプレイ、リプレイ、リプレイ......、まるでピンボール・ゲームそのものがある永劫性を目指しているようにさえ思える。
講談社文庫 P30

で、 繰り返しというのは、すごく興味のある話なので、 それがテーマだと、最後まで信じ続けた。

過去にしていた繰り返しを、現在も惨めに思っているのは分かる。
(正直、それで長々感想もかけそうなんだけど)

でも、
パズルは解けるのが分からない。
双子は消えるのも分からない。
なんでも、テーマと結び付けたがるので
テーマを決め付けて読むこと自体よくないかもしれない。

最後がよく分からんが面白い。
最後がどういう意味かよく分からない。
そもそも、最初からよく分かってないかもしれない。
でも、確実に面白かった。

読み終わってから、
『村上春樹は自作の解説を、登場人物が読んでいる本で暗示することが多い。』
と、amazonのレビューで書いていた。
確かに、
この作品で読んでるのは、「純粋理性批判」。
小説内で、「純粋理性批判」から引用される一説、
「哲学の義務は、誤解によって生じた幻想を除去することにある。」
たしかに、小説にも通じるところがありそうで、何か重要そうだ。

で、
感想を書く前に
純粋理性批判について、調べた。
調べた結果、
概要さえ、繰り返し、繰り返し読んでも分からない。
主人公は、「純粋理性批判」なんて難しい本を読むから、
苦しむんだと、思いました。

書評(10点中) 6点 読みやすさ +0.5点
小説の基本情報 管仲〈上〉 (文春文庫)表紙
管仲
宮城谷昌光
文藝春秋
発売日:2006-07
定価:¥ 610
315ページ
アマゾンで詳細を見る

管仲は名前ばかりで有名で、
どんな人だろうと思ってたので、
初めて春秋の歴史ドラマみたいなビデオで、
「管仲」見たときびっくりした。

桓公を、矢で射殺ろそうとする。
⇒名宰相がいきなり暗殺!

桓公、死んだ振りして、管仲から逃れる。
⇒名宰相が騙された!

桓公、管仲を宰相に迎える。
⇒名宰相が許された!

桓公、覇者になる。
⇒名宰相は権力者の隣で笑ってるだけ!

管仲、自分の息子を殺して食肉として出すような料理人は次の宰相にするなと、桓公に遺言する。
⇒名宰相の言っていることは、あたりまえだ!

ビデオの見た感想は、
こいつはいったい何なんだ。
という印象しかない。

で、読む気になったのがこの本。
名宰相と言うぐらいなので、
宰相の実績が知りたい。

上巻をせっせと読み続けるが、
ぜんぜん、宰相になる気配がない。
上巻の最後に、下巻の目次がついてたので見ると、
「覇者への道」の章が後ろから3つ目!
全体の23/26は、宰相以前の話。

前半は、史実の人物や戦争に管仲を結び付けた
宮城谷昌光のフィクションっぽいけど、
管仲の紆余曲折があるから面白い。
それに、金言が多い。
管仲と鮑叔の出会いから、
管鮑の交わりと言われるまでの過程に多くのページをさいている分、
管仲と鮑叔が、異なる公子を立てて、
君主争いの知恵比べするところが読み応えがある。
管仲が桓公に矢を放つところは、一番の見せ場だし、
宮城谷昌光も、一度書いたストーリーを、
異なる文献からもう一度再考したりするという
変わった書き方を違和感なく読ませる。

宰相になると(といっても3章しかないけど)、
文献の名前がよく出て、フィクション色が減る。
軍事より、国力や外交力で覇者になったところの過程など、
一番興味のあるところだったが、
宰相になった管仲は、言ってることが一から十まで正しすぎて、小説として面白くない。
宰相になった後も、失敗や、
鮑叔との意見の対立があるなかで覇者となる過程が読みたかった。
というか、やっぱり宰相時代の分量が少なすぎる。

倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る。
を、管仲の言葉とするならば、
もつちょっと菅子の話をいれて宰相時代の話をしてほしかった。

この小説に関しては、
amazonのカスタマーレビューでは絶賛している人が多い。
一方で、宮城谷昌光は、準備不足の上、体調が悪かったのか?
絶版にして書き直せというブログもある。

僕は、一青年の出世物語とすれば、
まあまあ面白いのかもしれないけど、
管仲を題材とした小説なら、
この小説はものたりないと思う。

書評(10点中) 4点

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